大雪で建物の倒壊相次ぐ

昨年末から大雪に見舞われた秋田県横手市などで建物の倒壊が相次いでいる。屋根に積もった雪が気温の上昇にともなって重みを増したことが原因とみられ、がれきが道路をふさいだり周辺住宅に被害を及ぼしたりしている。ただ、倒壊したがれきや空き家は「個人の資産」が壁となり、自治体が有効な手立てを講じることができないでいる。

 「バリバリとものすごい音で目が覚めた。地震で揺れたばかりだったので自宅がつぶれたのかと思った」

 2月半ば、横手市の住宅街。冬期間営業していない木造2階店舗が倒壊した時のことを、隣家の男性(71)がそう振り返った。けが人はなかったが、倒壊店舗が男性宅にもたれかかって雨戸などが壊れ、他の近隣住宅のガラスも割った。

 隣接する市道はがれきが散乱し、6日現在も通行止めが続く。住宅街と大通りをつなぐ道路がふさがれ、近くの70歳代女性は「長期間迂回うかいするのは不便。いつ通れるようになるのか」とこぼした。

 同市では今冬、大雪による建物の倒壊(全半壊)が1日までに33軒確認された。断続的に雪が降り続いた1月だけでなく、降雪が落ち着いた2月中旬以降も空き事務所や木造2階住宅で被害が出た。隣の湯沢市でも、空き店舗など1日までに15軒の倒壊が確認された。

 両市は、屋根の雪が解けたり雨で水を含んだりして重くなったことが原因とみている。背景には、断続的な降雪で雪下ろし業者への依頼が殺到したほか、例年は年末年始に帰省して除排雪の担い手となっていた親戚が新型コロナウイルスの流行で帰省しなかったなどの要因があるとみられる。

 こうした事情を考慮し、湯沢市は今冬に限定して住宅復旧にかかる費用を助成する制度を検討している。ただ、倒壊の恐れがある空き家や倒壊したがれきの撤去となると事情は異なる。

 約1400軒の空き家を抱える同市では、住民から「倒壊しそうだ」「屋根から雪がせり出して危ない」と相談を受けると、市職員が現場を確認。所有者に危険を知らせる文書と現場の写真、雪下ろし業者の一覧表を送り対応を求めている。中には対応しない所有者もおり、住民から代わりに雪下ろしの代行を求める声もあるが、「個人の財産のため直接関わるのは難しい」という。

 横手市では倒壊した建物のがれきの早期撤去を求める声が住民から出ているが、市幹部は「建物はあくまで個人の資産で勝手に手を着けられない」と話した。

読売新聞オンライン